復活の日 VIRUS

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 また例によって行き着けの店でDVD漁りをしたら、映画「復活の日」の廉価版DVDがあった。

 一応この映画、というか原作は(読んだことはないけど)知っていて、多分小学生くらいのときに読んだ「トリフィドの日」の子供向け翻訳のあとがきに滅亡テーマSFの一例として挙げられていたと記憶している。「渚にて」とかと一緒に。で、名前は覚えていたのだけどそれ以上掘り下げずこの歳になってしまった。
 時の流れるのは早い。悲しいことだ。

 襤褸をまとって杖を手に赤い太陽を背に佇む…インパクト十分なジャケットじゃん。
 ジャケット裏の写真も破滅的ながら魅力を感じた。あと、若かりし頃の草刈正雄さんがかっこいい!
 という訳で観てみることにした。

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 注意その1:
 この先ネタバレあります。ご注意ください。

 注意その2:
 この作品は、中二病が治ってない人は観ないことをお勧めします

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 あらすじが載ってるサイトは何ぼでもあるのでごくごく簡単に。

 軍事目的によって作り出された細菌「MM-88」が世界中に蔓延し地球上のほぼ全ての脊椎動物が死に絶える。
 MM-88は極低温下では活動が衰える性質を持つため、南極大陸にいた越冬隊と、蔓延前に出航したイギリスの原子力潜水艦の乗組員だけが生き残り、彼らは新たな政府を樹立する。
 しかし、日本の越冬隊で地震の研究をしていた吉住がワシントンDC直下で起こると予知した地震により、それを核攻撃と誤認した自動報復装置(ARS)によって連鎖的に世界中に核ミサイルが発射され(ソ連も同様のシステムを稼動させているため)、そのうちの一つが南極の新政府の拠点としたアメリカ基地にも飛来する、ということが分かったのだ。
 ARSを停止させるため、決死隊としてアメリカ人カーターと吉住がワシントンDCに乗り込む。…が、失敗し「世界は二度死」ぬ…
 …その4年後、襤褸をまとってただひたすら南に向かって歩きつづける一人の男がいた…

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 まず、観終わった後に、”すっきりさわやか、明日への活力になった”というような感想は出なかった。もちろん駄作という意味じゃなく、「その後」のことを考えるとちょっと暗澹たる気持ちになったということだ。

 最後に吉住とマリトが再会して固く抱擁し、そこに生き残りの皆も駆けつける、そのエンディングシーンそのものはハッピーエンドだ。しかし、おそらく人類は彼らで潰えるであろう、ということが多少なりとも想像力があればいやでも分かるはず。
 だからエンディングで、吉住、がんばったね、良かったね…(´;ω;`)…となりつつも、暗くなってしまうのだ。

 それは製作陣も意図していると思う。もしそうでなければ、エンディングに(オープニングでもかかった)「ユー・アー・ラブ」みたいな淋しい曲をかぶせんでしょう。
 「里見八犬伝」のエンディングみたいな爽やかで明るい感じの曲を被せなかったあたり、かなり意図的で、まさに行間を読め!という感じで「その後」を暗示させている。(´・ω・`) ちなみに「里見八犬伝」も同じ深作監督だよね。

 本物の潜水艦を使ったり、大規模なセットやら大道具・小道具、実際に南極でロケしたり、ハリウッドでも活躍してる俳優陣の起用など、とにかく金がかかってるなあ~という感じ。もちろん観ているときは入り込んでいるのでそれほど感じないけど、思い返せばここも、あそこも…ってな感じ。逆にこれだけお金をかけているからこそ、入り込めたのかもしれない。
 とは言え、大ヒットを当て込んでこれだけ制作費を投じても、公開当時は収支トントンかちょっと赤字だったらしい。世間は厳しい(;^ω^)

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 首尾一貫して淡々と冷徹に世界の終末を描く。オープニングからして冷徹だ。潜水艦から射出された無人偵察機が映し出す、白骨死体が累々と転がる壊滅した東京の姿。”イタリア風邪”(MM-88なんて誰も知らないからこう呼ばれた)による死体の山を火炎放射器で火葬にする。病院は患者であふれ、パニックとなった住民がさらにそこに詰め掛ける…

 もちろんドラマはある。吉住と、その別れた妻・則子とのエピソードや、南極隊の辰野が錯乱して外(南極の吹雪の中)に飛び出していってしまったり、マリトと吉住のロマンスや、カーターと吉住の友情などなど。
 一応劇映画なのでそのようなエピソードを重ねていってるわけだが、この映画の主軸は「いかにして人類が滅びていくのか」を描写するところにある(んではないかと思う)。そこを勘違いすると、「何だよ、長いだけでつまらん映画だ」ってな感想を持ってしまうかもしれない。

 そういう訳なので、ハリウッド方式劇映画メソッド(長い)に飼いならされた目で見るとがんがん裏切られる。
 まず、病院でただ一人生き残った則子が最後の力を振り絞って、友人・辰野好子の家を訪ねる(好子は南極越冬隊の辰野隊員の妻である)、そこで好子が布団で力尽きていた。その手には越冬隊出発の時に記念写真を撮ったアルバムが。吉住と辰野一家が写っている。切ないシーンである。
 その隣の部屋で、辰野家の一人息子・旭がまだ生き残っていた。
 ハリウッド方式だと、この二人だけが生き残っているのが発見されそれが突破口となる、みたいなパターンにかなりの確率でなりそうだが、そうは問屋が卸さない。実際に死亡する場面は描かれてはいないものの、モーターボートで海に乗り出し、おそらくは苦しまずに死ねるよう睡眠薬を口にして…つまり何一つ解決には結びつかないのだ。

 ホワイトハウスでバークレイ上院議員が、幽閉されていたマイヤー博士を連れ戻しても、やっぱり解決しない。
 最後にホワイトハウスの執務室には大統領とバークレイの二人だけが残り、バークレイはそこで死ぬ。彼らの会話から、マイヤー博士も何もできずに死んだことが分かる。
 そこへ頭がおかしくなった(それとも元々そうなのか)ガーランド将軍がARSの作動許可を得に現れるが大統領は喝破する。そして大統領自身も力尽きる。人類最後の生き残りである各国の南極隊へ全てを託して…
 しかしガーランドはそのままARSの司令室に赴き、ARSのスイッチを入れてしまう。それが次なる災難の芽となる訳だ。

 それからしばらく経ち、地震によるARSの誤作動を防ごうと吉住とカーターが司令室に行く。プラスチック爆弾で扉を破壊しながら中に侵入していくが、最後の扉を破壊する際に突然の地震に退路を塞がれ、そこに爆弾が炸裂してカーターは瀕死の重傷を負う。
 一人司令室に入った吉住が見たものは、ものの見事にARSが作動して、今まさに核ミサイルを発射しようとする自動機械!

 凡百(ハリウッド方式含む)の映画なら、ここで間一髪スイッチを切るのに成功して大歓声の中南極に戻り、マリトと固く抱擁して「人類は不滅である!人生は良いものだ!」的な台詞かモノローグでメデタシメデタシ、てなラストシーンとなるのだがもちろんこの映画はそうならない。
 スイッチを切るのは間に合わず、吉住はただ各地に向かって飛んでいく核ミサイルのモニター画像を見るしかなかったのだ…そう、やっぱり何も解決しないのである。
 ただ一つの救いは、世界中に核ミサイルが飛び交った結果(明示はされないが)、核爆発の中性子線によってMM-88が無毒の変異体を生み出した(だろう)事。しかし世界中放射能汚染が広がっただろうし主要国のインフラやら何やら全部破壊されただろうし絶望的な状況なのは変わらぬ。

 ARSが作動した4年後、おそらく南米大陸の南端の辺りと思われる場所の小屋。
 吉住とカーターが失敗して核ミサイルが飛来したときのために、先行して南極政府(元アメリカ越冬基地)から避難した女性と、数人の男性たち(抗体を作るのに成功したラ・トゥール博士含む)、そして南極で生まれた子供たちがここで暮らしている。

 どうやら南極基地にもミサイルが飛来し、他の南極政府の人々は全滅してしまったらしい。
 マリトが小屋の外で景色を眺めていると遠くから人影が…そしてその胸には反射光…吉住の出発前にマリトが渡した銀色のロケットだ。
 かくして、やっと物語は大団円を迎える。人類の絶滅一歩手前で。

 ちなみに原作では、核爆発(中性子爆弾?)によって生じた大量の中性子線で吉住の頭はパーになって、それでもひたすら本能(執念?)で歩いて帰ってきたということなのだそうだ(原作読んでないから実際どんなんか分からんけど)。
 映画では全くそういう描写はないが、それはそれで欝になるので無くてよかったわ。それに中性子線によって脳に障害が…ということ(根拠)を科学的に描写できるような設備はどう考えても小屋にはないだろうし、構成が冗長になりすぎてしまうだろうし、その辺無くする判断は良かったんではないかと思う。

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 気付けば長文になってしまった。まだ書きたいことがある気がするけど、ぱっと出てこないからこの辺にしとこう。
 長い映画だったけど、飽きずに最後まで観れた。
 最初に書いた通り「スカッと爽やか」タイプの話じゃないけど、でも観て良かったと思う。

 海外でも公開されたとのことだが、構成ががらっと変えられてかなりひどい出来だったらしい。これまた見てないから分からない。
 ただ、Amazon.comで海外版ビデオによせられたレビューを見たら、"だまされるな、これはオリジナル版じゃないぞ!" みたいな文句が並べられていた(;^ω^)...やっぱりひどい出来らしいなあ。話のネタに観てみようかと思ったがやめとこう。

 個人的に一番共感したのは、則子が旭を見つけるシーン。やはり子供を持つ身としてはこたえた。自分(と嫁)が突然いなくなった時、子供たちはどうなるのか…想像して胸がぎゅっとなった。
 これは学生の頃や独身の頃に見たのでは想像もできなかったと思う。少し大人になった今観たからこそ、分かるものがあったのかもしれない。10年くらいたって観たらまた違うのかもしれない。
 いつまでも成長しない中二病の人は観ないほうがよろしい、というのはまあそういう訳なんですわ。

 公開当時は評判が低くても、後になってから評価される作品はいっぱいある(「カリオストロの城」とかね)。これもそういうパターンかな。細かいことは気にせず大きな流れに身をまかせる、そういうタイプの映画だね。
 うん、まとまったw

 したっけ~ ヽ(´ー`)ノ

(追記) そういや特撮について書くの忘れてた。潜水艦のシーンは多分全部本物を使っての撮影だし、核ミサイルも実写フィルムが使われている。死体とか荒廃した都市なんかは、どっちかと言うと特殊美術だろうしなあ。
 ただ、あまり目立たないところでちょこちょこ使われている。こういう映画の場合、あまり派手な特撮は使われないし、それは正しいと思う。
 派手なのは核爆発でワシントンDCが破壊されるシーンくらいかな。潜水艦から射出される無人偵察機の特撮は結構好きだな。

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この記事へのコメント

  • アメリカ版について

    古い記事にコメント失礼します。
    アメリカ版についてですが、ヨシズミがARSの阻止に失敗して各地で核爆発が起きた場面でおしまい、です。そこから強引にエンドロールが流れ、実質1時間40分程で纏められています。

    ちなみに多岐川裕美がメインになるシーンはまるまるカットされています。冒頭の草刈正雄との会話や回想もありません。基本的に日本側の出来事は無かった事になっています。
    カーターが事切れる直前に「ヨシズミ…人生はいいものだ…」と日本語でつぶやくシーンですが、こちらも「ヨシズミ…」の一言のみ。日本語部分はカットされています。
    めちゃくちゃ過ぎるのですがそれでも良い映画だと評価している人もいるあたりはやっぱり外国人て感覚違うんだな~と思うところでもあります(笑)

    youtubeでVirus (1980) - US Versionと検索すると字幕なしですが見られますのでもしご興味がおありでしたらぜひ。
    2015年07月01日 10:31
  • うぼで

    あの黒い潜水艦が夕焼けをバックに航行する場面もっと観たかったです。
    2020年01月10日 09:16

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