八月の鯨


 またいつもの店でDVD漁りをした。観たい作品はいくつもあれど先立つモノには限りがある故全てを購入する訳には行かぬ。
 個人的にレンタルビデオはデフレを助長するものという位置付けなので最後の手段である。近くに店が無くて借りるのも返すのも不便、という事情もある。
 基本的にルーズな人間故オンラインのレンタルは所謂借りパクに近い状態になる可能性があり、これも上手くない。

 ついでに言うと、映画のビデオというのは、「これが観たい!!!」と言って買うのは本当に稀なのである。まさに一期一会。出会ったときにビビビビン!(ビンタされた音ではない)と来た作品に相応の対価を払って観る。安売りしてるのを買うことが多いけど。貧乏人じゃ、許せ。志をかってくれ。
 それなりの(少なくともレンタルよりは高額な)金額を支出するということは必然的に大事に観ることになる。これは大事なことだ。

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 今回は、いつもとは趣きが違う。SFでもアクションでも特撮でもない。
 パッケージからして、おばあちゃんの写真である。

 この作品に出会ったのは、はるか昔、中学生くらいのころであったと思う。この頃北海道では、土曜か日曜か(忘れた)深夜に「ウルトラ倶楽部」と銘打ってウルトラシリーズを二本立てで再放送していたのである。それこそウルトラQとウルトラマンの第一話から始まり、ウルトラQが終わればウルトラマン(の続き)とウルトラセブンの二本立て…てな具合で、多分この当時の北海道在住特撮ファンは皆観ていたのでないかと推察される。
 当時のビデオソフトは高額だったし、マニア向け商品は店にもあまり無かったし(特に田舎は)。当時はアマゾンも無かったしなw だからこそ毎週コンスタントにウルトラシリーズが観れるこの番組は貴重であった。「80」から「ティガ」までの長い空白時期の頃である。
 (ちなみにウルトラゾーンのオフィシャルファンブックの田口監督のインタビューによると彼も観てたらしいwww急に親近感が増したわwwwww)

 その辺の流れで観ていた番組に「あっと・ハット・シネマ」という、新作映画の紹介番組があった。
 内容は実にシンプルで、オカマの映画評論家が知った風な事を喋るとか出演俳優のインタビューとかそういう余計な部分が無く、基本的に映画のシーンを編集して流すだけ(要するにダイジェストのみ)。キャストやスタッフなどの字幕が入ってたくらいかな。
 半分BGMのような感じであったのだがよく観ていた。

 この番組である時この映画が紹介され、それによってこの映画を知ったと記憶している。
 …けど、もしかしたら記憶違いかもしれない…書いてて自信が無くなってきた…すまぬ(´・ω・`)

 当時から特撮やらSFやらばっかり観たり読んだりしてた訳だが、何故か心に引っかかった。…と言っても映画館に足を運ぶ訳でもなく…時間ばかりが流れた。
 それからしばらく経ったある日のこと。昼ごはんのときにテレビのチャンネルを回したら、テレビ東京の「午後のロードショー」がちょうど始まったところで、そこで放映されたのがこの「八月の鯨」であった。こうしてファーストコンタクトが成ったのである。

 で、時間は現在、場所はDVD売り場に戻る。
 他にも観たいものは色々あったのだが結局これにした。安くなってたし(´・ω・`)
 だから今回は再見ということになる。

 …それにしても前置きが長い(;^ω^)

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この先ネタバレあります。ご注意ください。(m´・ω・`)m

あらすじ
 舞台はメイン州の海に浮かぶある島。入江の丘に建つ小さな家。
 リビーとセーラの姉妹、友人のティシャが丘の上から、入り江に来た鯨を見る。

 時は流れて現代(1970~80年代か)。
 入江の小さな家に暮らす、年老いたリビーとセーラ。

 リビーは白内障によって目が不自由になり、セーラに介護されているが、すっかり偏屈になりセーラを困らせている。最近では自らの死をたびたび口に出すようになってきた。
 セーラは、若くして戦争で亡くなった夫の写真に話しかけながら家事をこなす。

 そんな二人の、ある夏の日の数日間を描いた物語である。

 以上

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 …ってそれだけかーい!と思われたかもしれない。
 と言われましてもね、全てがひっくり返るような大きな事件で話が動くようなスジじゃないんですよ。もちろん話は動くのだけれど。
 描写はかなり控えめで淡々と日常の風景が描写される。こういう作品はあらすじが書きにくい(;^ω^)

 主な登場人物は、セーラとリビーの姉妹の他、友人のティシャ、やもめのロマノフ、大工のジョシュア。
 皆おばあちゃんとおじいちゃん。極端な極悪人が出てくる訳ではない。かと言って聖人君子ばかりでもない。ちょっと意地悪だったり、頑固だったり、がさつだったりする。良いところも悪いところもある。

 キャサリン・マンスフィールドの短篇小説を読んでいるような感じである。それゆえに作る側観る側双方に繊細さが要求される。
 演出も演じ手も行間を読まねばならず、それ相応の能力を要する。当然ながら観る側もそうであるので、ある程度観客を選ぶと思われる。
 まあ芸術とは多かれ少なかれそういう面がある。それは仕方の無いことなのである。

 いささか嫌味に聞こえるかもしれないが、芸術は分かる範囲で嗜むのが最も正しい楽しみ方なのだ。
 例えば自分は抽象画とか観ても面白くもなんともない。まあそういうもんなんである。

 ティシャの申し出をきっぱりとはねのけたセーラ。それを自室で聞いていたリビーの、孤独と不安で頑なだった心が解け、姉妹の心が溶け合う。
 エンディングで涙が一粒ポロリと落ちる、そんな映画なのです。

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 劇中に出てくる、島の自然はいいね。暑すぎない夏の様子は郷里の北海道を思いださせる…(´ー`)
 また、セーラ、リビー、ティシャの三人のところに、ロマノフが訪ねてくるところで、三人がささっと髪をなでたり服を治したりするのが可愛い。女子だね~という感じ。
 ロマノフの紳士っぷり、それとは真逆のジョシュアの天然っぷりが対象的で面白い。

 誰も、老いや死から逃れることは出来ぬ。この映画は容赦なくその現実を突きつけてくる。しかし、ところどころにこういったユーモアがちりばめられ、暑すぎない夏とも相まって全体的に爽やかな感じで後味が良い。

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 さて、この映画に関しては本当に作品の中身以外の事は何一つ知識が無かったのだが、調べてみると、日本公開の89年当時、岩波ホールで創立20周年記念作品としてロードショー上映され異例の長期上映(31週!)となったとのこと。淀川長治さんも絶賛したらしい。
 やっぱ見る人が見れば分かるんだな~。俺も大したもんだなw(ヲイ

 全然知らなかったが、この2月に岩波ホール45周年を記念して再上映されるという。
岩波ホール45周年記念、名作「八月の鯨」をニュープリントで再上映 - Ameba News [アメーバニュース]
http://news.ameba.jp/20121022-133/

「八月の鯨」 岩波ホール 2013年2月16日(土)よりロードショー
http://www.iwanami-hall.com/contents/next/about.html
 詳細は分からないけど全国順次公開とのこと。未見の方は、是非。

 したっけ~ ヽ(´ー`)ノ

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